子どものスポーツ動画をSNSに投稿する——親と子ども、それぞれへのメリットとリスクを考える

「うちの子のプレー、みんなに見てほしくて思わず投稿してしまった」
「セレクションのPRになるかと思ってYouTubeに上げたけど、本当に大丈夫なのかな?」

InstagramやX(旧Twitter)、YouTube、TikTok——SNSを通じて子どもの活躍を記録・発信する親が急増しています。試合での鮮やかなゴール、感動的な逆転劇、日々の練習風景。「記録として残したい」「遠方の祖父母に見せたい」「スカウトの目に触れてほしい」という動機で投稿した動画が、数万回再生されることも珍しくない時代になりました。

しかし、この行為には親と子ども双方に対する、メリットとリスクが複雑に絡み合っています。特に注目すべきは、投稿される当事者である「子ども自身」への影響です。自分の映像が公開されることを十分に理解・同意していない場合、心理的・プライバシー的な問題が生じる可能性が研究でも指摘されています。[1]

本記事では、子どものスポーツ動画SNS投稿について、親・子ども双方の視点からメリットとリスクを整理し、「どうすれば子どものためになる形で発信できるか」を考えます。

目次

「子どものスポーツ動画投稿」の現状——なぜ増えているのか

投稿が増えている背景

スマートフォンのカメラ性能の飛躍的な向上と、SNSプラットフォームの普及により、試合・練習の動画を撮影・編集・投稿するハードルが大幅に下がりました。

投稿の主な動機具体的な内容
記録・保存子どもの成長を映像で残したい。将来見返すための思い出づくり。
家族への共有遠方に住む祖父母・親戚に活躍を見てもらいたい。
コミュニティとの共有チームメンバーの親同士で成長を喜び合いたい。
PR・スカウト目的才能をスカウトや上位チームに見てもらいたい。セレクションのアピール。
教材・フィードバック目的プレーを振り返って技術改善に役立てたい。コーチからのアドバイスをもらいたい。
承認・共感を得るいいねやコメントで我が子の頑張りを認めてもらいたい。

「シェアレンティング」という社会現象

親が子どもに関するコンテンツをSNSで共有する行動は「シェアレンティング(Sharenting)」と呼ばれ、世界的な社会現象として研究が進んでいます。[1]スタインバーグ(2017)は、「多くの親は子どもの同意を得ずに投稿しており、子どもが自分のデジタルアイデンティティを管理する権利が侵害されている」と指摘します。[2]

日本でも、子どもがSNSに自分の映像が投稿されていることを後から知り、「恥ずかしい」「やめてほしかった」と感じるケースが報告されています。この「子どもが選択していないデジタル上の自己表現」という問題は、スポーツ動画投稿においても避けられないテーマです。

親にとってのメリットとリスク

親にとってのメリット

① 成長記録としての価値

動画は写真よりも「動き・声・表情・雰囲気」を記録できます。子どもが5年前にどんなプレーをしていたかを映像で見返すことは、子ども本人にとっても親にとっても、かけがえのない経験になります。特にスポーツは成長の変化が視覚的に明確なため、動画記録の価値は非常に高いといえます。

② 遠方の家族・コミュニティとの絆

地方に住む祖父母、海外に住む親戚など、試合を直接観に来られない家族に活躍を届けられます。ライブングストン&ブラム=ロス(2020)は、「デジタル共有は地理的に離れた家族の絆を維持する有効な手段である」と述べています。[3]チームの保護者コミュニティとの共感形成にも機能します。

③ 技術改善・振り返りのツール

撮影した動画を子どもと一緒に見返すことで、映像による客観的な自己評価が可能になります。コーチがいない自主練でも、フォームや動きのクセを把握するための貴重なツールです。プロのスカウトや上位チームのコーチがSNSで選手を探すケースも実際に増えており、才能発掘の機会としての側面もあります。

④ 親自身のコミュニティ形成

投稿を通じて同じ境遇の親同士がつながり、「同じ悩みを持つ親」としての連帯感や情報交換が生まれます。子育ての孤独感を減らす効果が期待できます。

親にとってのリスク

① 「映え」追求によるプレッシャーの強化

「良いプレーの動画を撮りたい」という意識が強くなると、子どもが失敗する試合や調子の悪い練習に対して親がネガティブな反応を示しやすくなります。「カメラが回っている場面でのいいプレー」が無意識の目標になるというゆがみが生じる危険性があります。[4]

② 他の子どもとの比較コンテンツへの過剰な接触

SNSのタイムラインには、他の子どもの「うまくいった動画」が流れてきます。これにより、客観的な評価よりも「他の子と比べてうちの子は…」という比較思考が強化されやすく、親の不安や期待値のゆがみにつながります。

③ プライバシー・セキュリティリスク

試合会場・学校名・ユニフォームの番号・位置情報などが動画から特定される可能性があります。また、不特定多数に子どもの顔・名前・所属が知られることで、なりすまし・無断利用・ストーカー行為などのリスクが生じます。[5]

親にとってのメリット・リスク まとめ

メリット⚠️ リスク・デメリット
成長記録として一生の財産になる「映えるプレー」を求めて子どもへのプレッシャーが増す
遠方の家族・チームコミュニティとの絆が深まる他の子どもとの比較思考が強化される
映像による技術振り返り・改善のツールになるプライバシー・個人情報漏洩のリスク
スカウト・才能発掘の機会につながる可能性著作権・肖像権のトラブル(チームメイトの子どもが映る)
同じ境遇の親同士のコミュニティ形成承認欲求の充足が目的化するリスク

H2:子どもにとってのメリットとリスク——当事者視点で考える

子どもにとってのメリット

① 映像による客観的な自己認識・成長の実感

自分のプレーを動画で振り返ることは、スポーツ科学でも推奨されるビデオフィードバックの手法です。[6]「自分がこんなふうに動いているとは思わなかった」という気づきは、修正のモチベーションに直結します。過去の映像と現在の映像を見比べることで、成長を視覚的に実感でき、自己効力感の向上につながります。

② 応援・承認による内発的モチベーションの向上

祖父母や親戚から「見たよ、すごかった!」と声をかけてもらえる体験は、子どもにとって強力なモチベーション源になります。デシ&ライアン(1985)の自己決定理論では、「有能感(自分はできる)」と「関係性(誰かに認められている)」がモチベーションの根幹であると述べており、[7]動画を通じた応援はこの両方を満たす可能性があります。

③ 才能発掘・キャリアの機会

実際に、SNS動画がきっかけでスカウトに声をかけられた選手の事例が国内外で生まれています。特に地方在住など、スカウトの目に触れにくい環境にいる子どもにとっては、SNSが地理的なハンデを越える唯一の窓口になりえます。

子どもにとってのリスク

① 「見られることへのプレッシャー」によるパフォーマンスへの悪影響

「動画を撮られている=うまくやらなければならない」という意識が生まれると、試合・練習に「評価される場」としてのプレッシャーが加わります。ガルシア&ハーゲン(2016)は、SNSでの発信を意識した子どもほど「失敗を恐れる」傾向が強まると報告しています。[8]前の記事で取り上げた「萎縮して消極的になる問題」と、この「見られるプレッシャー」は密接に連動します。

② 「デジタルアイデンティティ」を自分で選べない問題

子どもは成長とともに「自分のことをどう見せるか」という自己表現の主体性を持ち始めます。しかし、幼少期から親が決めた形で大量のコンテンツがネット上に存在している場合、「デジタル上の自分」を自分でコントロールする機会が失われます[2]

ある研究では、成人した子どもの約63%が「親に幼少期の自分の写真・動画を無断でSNSに投稿されていたことを後から知り、不快に感じた」と回答しています。[9]

③ ネガティブなコメント・誹謗中傷へのリスク

公開された動画には、見知らぬ第三者からのコメントがつきます。否定的なコメントや、スポーツの技術・外見に関するネガティブな言及は、子どもの自尊心に直接ダメージを与えます。子どもはそのコメントを親より早く・直接的に受け取ることもあります

④ 「比較・ランキング文化」への巻き込まれ

SNS上では「○○選手vs○○選手」「この年齢でこのレベルは天才」といった比較・ランキングコンテンツが生まれやすい構造があります。自分の動画が意図せずそのような文脈で拡散・使用されると、子どもは「常に他者と比べられる存在」として自己認識するリスクがあります。

⑤ 「親の承認欲求のための道具」になるリスク

「いいね」の数に敏感になった子どもが「親を喜ばせるために頑張る」という外発的動機に傾いていく場合があります。また、子ども自身が「自分はコンテンツとして価値があるうちは大切にしてもらえる」という歪んだ認識を持つリスクも指摘されています。[4]

子どもにとってのメリット・リスク まとめ

メリット⚠️ リスク・デメリット
映像で成長を実感・自己認識が深まる「見られるプレッシャー」でパフォーマンスが低下する
遠方の家族・応援者から承認を受けられるデジタルアイデンティティを自分で選べない
ビデオフィードバックによる技術改善ネガティブコメント・誹謗中傷へのリスク
スカウト・才能発掘の機会比較・ランキング文化に巻き込まれる
「自分の頑張りが残っている」という自尊心の土台「親の承認欲求の道具」になるリスク

H2:年齢・発達段階別に考える——子どもの「理解と同意」の重要性

子どもが「自分の映像がSNSで公開されること」の意味をどこまで理解できるかは、発達段階によって大きく異なります。[10]

世代SNS・公開に対する理解度投稿に際して考慮すべきこと
幼児〜小学校低学年 (〜8歳)「インターネット上に永続的に残る」という概念の理解が難しい。「見せる」=「家族が見る」という認識。子どもの意思確認は難しい世代。プライバシー設定を「家族限定」「非公開」にし、顔・名前・所属が特定される情報の公開は極力避ける。
小学校高学年 (9〜12歳)SNSの存在は知っているが、「知らない人に見られる」リスクへの実感は薄い。友達に見られることへの意識(恥ずかしさ・かっこよさ)が強まる時期。本人に「どんな人に見てもらいたい?」と聞き、意向を確認する習慣を始める。「クラスメートにも見えるよ?」と具体的に伝える。
中学生 (13〜15歳)SNSの仕組みをよく理解しており、公開範囲・リスクを判断できる。プライバシー意識が高まる時期。自分で投稿する年代でもある。「投稿してもいい?」という明示的な同意確認が必須。本人が「やめてほしい」と言った場合は必ず従う。本人が自分で管理する自律性を尊重する。
高校生 (16〜18歳)成人に近い判断能力を持つ。自分のデジタルイメージを強く意識している。基本的に本人の意思を最優先にする。スカウトPR等の目的がある場合、本人と戦略を一緒に設計する(子ども主体で)。

「「子どものプライバシーの権利」は、国連子どもの権利条約第16条で明示されています。子どもは「その私生活、家族、住居または通信に対して恣意的または不法に干渉」されない権利を持っています。これはデジタル空間においても適用されると解釈されており、親の「共有したい」という気持ちも、子どもの権利との調整が必要です。」

H2:子どものために「賢くSNSを活用する」実践ガイドライン

投稿前に確認すべき5つのチェックポイント

1. 子どもの同意を得ているか?「この動画を(誰に/どこに)投稿していい?」と明示的に聞く。「嫌だ」「やめて」という意思表示があれば、理由にかかわらず投稿しない。

2. 顔・名前・所属が特定できる情報が含まれていないか?ユニフォームの番号・学校名・チーム名・試合会場名が映りこんでいる場合は要注意。特に小学生以下は顔にぼかしを入れる選択肢も検討する。

3. 他のチームメイトの子どもも映っていないか?自分の子ども以外の子どもの映像を無断で投稿することは、その子の保護者の同意なしには原則として避けるべきである。チームとして投稿ルールを事前に決めておくことが理想。

4. 「失敗・苦しむ場面」の動画ではないか?好プレーだけでなく、転倒・泣いている場面・怒られている場面などは、子どもが将来見た時に傷つく可能性がある。また、他者からからかいの対象になるリスクもある。

5. 公開範囲は適切か?「全体公開」「フォロワー限定」「家族限定」「URL知っている人のみ」など、目的に合った公開範囲を選ぶ。スカウト目的なら「全体公開」も選択肢だが、そのリスクを子どもと共有した上で判断する。

目的別の推奨アプローチ

目的推奨する方法注意点
記録・思い出として残す非公開設定のYouTube、Googleフォト、家族限定のDropboxなどSNSに投稿しなくても十分。クラウド保存で安全に記録できる。
遠方の家族に届けるLINEグループ・家族限定のGoogle Photo共有アルバム「全体公開」にしなくても達成できる。
技術改善・フィードバックコーチ・チームとのクローズドグループでの共有、子ども本人と一緒に見返す批評でなく「問い」で振り返る(前記事参照)。
スカウト・PR目的本人と目的・リスクを十分に話し合った上で、本人主体で判断する中学生以上を想定。子どもが「やりたい」という意思が前提。
コミュニティ共有チーム保護者のグループ内での限定共有チームとして統一ルールを設けることが理想。全体公開は慎重に。

「子どもが自分で記録・発信する」文化を育てる

中学生以上では、子ども自身が自分のSNSアカウントを持ち、自分のプレーを自分で発信するという形が、デジタルリテラシー教育としても有効です。

•   「自分の映像を自分が管理する」という主体性が育つ

•   発信することのメリット・リスクを実体験として学べる

•   親は「発信のサポーター」として関わり、最終判断は子どもに委ねる

ただし、この場合でも親はSNSのリスク(炎上・個人情報・ネガティブコメントへの対処)について事前に子どもと話し合い、「何かあったらすぐに相談してほしい」という関係性を築いておくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 動画投稿でスカウトに見つかるって本当ですか?

国内外で実際の事例はあります。ただし、「スカウトに見つかった」ケースは投稿全体の極めて少数です。「スカウトされるかも」という期待を主な動機にすることは、子どもへのプレッシャーになりやすいため、あくまで副次的な可能性として認識することをおすすめします。スカウトを本気で狙う場合は、試合会場への直接の招待やスポーツ協会へのアプローチなど、より確実な方法と併用する方が現実的です。

Q2. 子どもが「投稿してほしい」と言っています。どこまで許可すべきですか?

子どもの意思を尊重することは大切です。ただし、年齢に応じたリスク教育も必要です。「全体公開にした場合、知らない人も含め何万人にも見られること」「コメントにネガティブなものが来た時にどう対処するか」を一緒に考えてから判断しましょう。中学生以上で本人が「やりたい」という場合は、本人が管理するアカウントで、本人が投稿する形が最も理想的です。

Q3. チームメイトの子どもも映っている場合、どうすればいいですか?

原則として、他の子どもが映っている動画を公開する場合は、その子の保護者の同意が必要です。チームとして「SNS投稿ルール」を事前に作成しておくことをおすすめします(「試合動画の全体公開は保護者全員の同意が必要」など)。

Q4. 一度公開した動画を削除すれば大丈夫ですか?

削除しても完全には消えませんスクリーンショットや転載・ダウンロードによって、削除後も動画・静止画が残り続けるリスクがあります。「公開は永続的」という前提で、投稿前に判断することが重要です。

Q5. 子どもが「もう投稿してほしくない」と言いました。どうすべきですか?

即座に従ってください。子どもが「やめてほしい」という意思を示したこと自体を尊重し、理由を問い詰めず、既存の投稿も子どもの希望に合わせて整理しましょう。「どんな形なら大丈夫?」と代替案を一緒に考えることも有効です。

H2:「積極的に投稿したい親」と「複雑な気持ちの子ども」——見えにくいギャップの実態

親は「喜び」、子どもは「複雑」——調査が示す認識のズレ

親がSNSへの投稿に積極的な理由のほとんどは「子どものため」「応援したいから」という善意に基づいています。しかし、当の子どもはどう感じているのでしょうか。

英国のLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)が行った調査では、「親が自分に関する投稿をすることを嬉しいと感じる」と答えた子どもは全体の約4割に留まり、残りの6割は「複雑」「やめてほしい」「気にしていない(無関心)」に分かれました。[14]一方で、親の9割近くは「子どもも喜んでいると思う」と回答しており、認識に大きなギャップがあることが示されています。

 親の認識子どもの実際の気持ち(調査より)
投稿することへの気持ち約88%が「子どもも投稿を喜んでいる」と回答喜んでいる:約40% 複雑・やめてほしい:約35% 無関心:約25%
投稿の目的「記録」「共有」「応援」がほぼ100%善意「親の自慢のために使われている気がする」と感じる子どもも一定数
プライバシー感覚「家族のことを共有しているだけ」という感覚「自分のことが知らない人に見られている」という不安
コメントへの反応ポジティブなコメントは子どもも嬉しいはずネガティブなコメントを子どもが先に見て傷つくケースがある

ギャップが生まれる3つの構造的な理由

① 「公開」の実感が親子で異なる

親にとってSNSへの投稿は「日記を共有する」感覚に近いことが多いです。しかし子どもは、特に小学校高学年以降になると、「クラスメートも、知らない大人も、世界中の人が見られる」という公開の実感を持ちます。同じ投稿でも「家族に見せる」と「世界に公開する」の間には、子どもにとって大きな心理的違いがあります。

② 子どもが「嫌だ」と言いにくい関係性

「親が喜んでやっていること」に反対することは、多くの子どもにとって心理的なハードルがあります。特に「親を傷つけたくない」「反発すると怒られそう」という懸念が、本音を言わせない構造を生み出します。ヒニカーら(2016)の研究でも、子どもはSNS投稿について不満を持っていても、親に直接言えないケースが多いことが示されています。[9]

子どもの本音(嫌だ・やめてほしい)

   ↓

「親を傷つけたくない」「怒られそう」という懸念

   ↓

「気にしてない」「別にいいよ」と答える

   ↓

親は「子どもも了解している」と認識する

   ↓

投稿が続く → ギャップが蓄積する

③ 成長とともに変わる「恥ずかしさ」と「プライバシー感覚」

幼稚園・小学校低学年のうちは「撮られること」「見てもらうこと」を純粋に喜ぶ子どもが多くいます。しかし思春期に入ると、自意識が高まり、自分のコントロール外に自分の映像が存在することへの嫌悪感が生まれます。

•   「昔の動画が今でも残っているのが嫌」——過去の未熟なプレーや子どもっぽい姿が永続するストレス

•   「友達に見られたらどうしよう」——SNSを使い始める年齢になると、同学年の目線を強く意識する

•   「自分のことなのに、自分が決めていない」——主体性・自律性の発達とともに、親の決定への違和感が増す

日本子どもの権利研究会(2023)の報告では、中学生の約52%が「親に自分の写真・動画をSNSに投稿されることに抵抗感がある」と回答しており、小学生(約28%)との間に大きな差が見られます。[15]

「積極的な親」に見られる4つのパターンと、子どもへの影響

親のSNS行動パターン親の意図子どもが感じやすいこと
好プレーのみハイライト投稿型「活躍を記録・共有したい」「うまくいった時だけ価値があると思われている」「失敗が怖くなる」
日常的な練習・試合をこまめに投稿する型「成長の過程を残したい」「常に監視・撮影されている感覚」「リラックスできない」
フォロワーを増やして影響力を持とうとする型「わが子の才能を広く知ってほしい」「自分がコンテンツとして扱われている」「承認されるために頑張らないといけない」
他の子の動画と比較するコメントをもらう型本人は比較を意図していない「他の子と常に比べられている」「劣っているとコメントされるのが怖い」

ギャップを埋めるための「対話の習慣」

親子のギャップは、悪意から生まれるものではありません。「確認しないまま進んでしまっていること」が根本的な原因です。定期的な対話で、子どもの気持ちを継続的に確認することがギャップを埋める唯一の方法です。

子どもの年齢確認の目安頻度確認すべき問い
小学生低学年 (6〜9歳)何かを投稿するたびに毎回「この動画、おじいちゃんたちに見せていい?」(具体的に誰に見せるかを伝える)
小学生高学年 (9〜12歳)月に1回程度の振り返り「最近投稿しているの、どう思う?嫌なのとかある?」
中学生以上 (13歳〜)投稿するたびに必ず事前確認「これ投稿してもいい?どこまでの範囲なら大丈夫?」(本人の判断を優先)

また、「投稿していい?」という問いに対して子どもが「別にいいよ」「どっちでもいい」と答えた場合、それは真の同意とは限りません。「断りにくいから同意した」可能性を念頭に置き「本当に嫌じゃない?いつでもやめてと言っていいよ」という安心できる関係性を作ることが重要です。

子どもが「投稿してほしくない」と言える家庭環境を

最終的に最も大切なのは、子どもが「これはやめてほしい」と親に言える関係性があるかどうかです。

•   日頃から「SNSについてどう思う?」という会話の機会を作る

•   子どもが「やめてほしい」と言った時、理由を問い詰めずすぐに従う

•   親自身が「失敗した投稿」を振り返り、子どもに謝れる姿勢を持つ

•   「あなたのSNS上の姿は、あなたが決めていい」というメッセージを継続的に伝える

「子どもは「ノー」と言う権利を持っています。そしてその「ノー」を安心して言えるかどうかは、日頃の親子関係の質にかかっています。」

まとめ|大切なのは「誰のための投稿か」を問い続けること

親・子どものメリット・リスク 全体まとめ

視点主なメリット主なリスク
記録・家族共有・コミュニティ形成・スカウト機会比較思考の強化・プレッシャー増加・プライバシーリスク・承認欲求の肥大化
子ども成長実感・応援による承認・ビデオフィードバック・才能発掘「見られるプレッシャー」・デジタルアイデンティティの喪失・誹謗中傷・外発的動機への傾倒

最も大切な問い

「この投稿は、誰のためのものか?」——これが、子どものスポーツ動画SNS投稿において親が常に立ち返るべき根本的な問いです。

•   子どもの成長を記録し、子ども自身が見返せるようにするため?→ 非公開・家族限定で十分

•   子どもが自分の才能を発信したいと望んでいるから?→ 子ども主体・本人のアカウントで

•   遠方の家族に届けたいから?→ 限定公開・グループ共有で達成できる

•   自分(親)が誰かに認めてほしいから?→ それが主な動機なら、立ち止まって考える

「子どもはいつか大人になり、今日の動画を見返します。「この映像、残っていてよかった」と感じてもらえるような投稿を——それが最も大切な判断基準ではないでしょうか。」

チェックリスト(投稿前に確認)

•   子ども本人の同意を取っているか

•   顔・名前・所属が特定される情報は含まれていないか

•   他のチームメイトが映っている場合、その子の保護者の同意はあるか

•   公開範囲は目的に合っているか

•   ネガティブなコメントが来た時の対応を子どもと話し合っているか

•   「この投稿は子どものためか、自分のためか」を確認できているか

参考文献

1. Blum-Ross, A., & Livingstone, S. (2017). Sharenting, parent blogging, and the boundaries of the digital self. Popular Communication, 15(2), 110-125.

2. Steinberg, S. B. (2017). Sharenting: Children’s privacy in the age of social media. Emory Law Journal, 66(4), 839-884.

3. Livingstone, S., & Blum-Ross, A. (2020). Parenting for a Digital Future: How Hopes and Fears About Technology Shape Children’s Lives. New York University Press.

4. Brosch, A. (2016). When the child is born into the internet: Sharenting as a growing trend among parents on Facebook. The New Educational Review, 43(1), 225-235.

5. 総務省(2022).『インターネットトラブル事例集』. https://www.soumu.go.jp/

6. Ste-Marie, D. M., et al. (2012). Self-controlled learning benefits the use of video feedback for learning motor skills. Research Quarterly for Exercise and Sport, 83(3), 394-400.

7. Deci, E. L., & Ryan, R. M. (1985). Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior. Plenum Press.

8. Garcia, S. M., & Hagen, E. (2016). Social comparison and athletic performance under evaluative pressure. Journal of Sport and Exercise Psychology, 38(6), 561-573.

9. Hiniker, A., et al. (2016). Not at the dinner table: Parents’ and children’s perspectives on family technology rules. Proceedings of CSCW 2016, ACM.

10.  Wartella, E., et al. (2016). Parenting in the age of digital technology: A national survey. Center on Media and Human Development, Northwestern University.

11.  国連子どもの権利委員会(2021).『デジタル環境に関する一般的意見第25号』. UN Committee on the Rights of the Child.

12.  文部科学省(2022).『情報モラル教育推進のための指導手引き』.

13.  Valkenburg, P. M., & Peter, J. (2013). The differential susceptibility to media effects model. Journal of Communication, 63(2), 221-243.(SNSが子どもの心理に与える影響の個人差)

14.  Mascheroni, G., et al. (2019). ‘Sharenting’: Parent perspectives. EU Kids Online, LSE. https://eukidsonline.net/(親子間の認識ギャップに関する欧州調査)

15.  日本子どもの権利研究会(2023).『子どものデジタルプライバシーに関する意識調査報告書』(中学生の52%が親によるSNS投稿に抵抗感を持つというデータを含む).

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