マルチスポーツの組み合わせ方とは?研究が示す「相性の良い種目選び」と実践のヒント

「マルチスポーツを始めたいけど、どんなスポーツを組み合わせたらいいの?」 「やみくもに増やすだけじゃダメな気がする…」

そんな保護者の悩みに、今回は国内外の研究や実践事例から見えてきた「スポーツの組み合わせ方」をお伝えします。

結論からいうと、マルチスポーツの組み合わせには「動きの補完性」という考え方が大切です。

マルチスポーツの組み合わせで大切な3つの視点

マルチスポーツで効果を最大化するには、ただ「数を増やす」だけではなく、どんなスポーツを組み合わせるかが重要になってきます。

① 動きの種類が異なるスポーツを選ぶ

文部科学省の学習指導要領では、スポーツを次の3つの「型」に分類しています。

  • ゴール型:サッカー、バスケットボール、ハンドボールなど
  • ネット型:バレーボール、テニス、バドミントンなど
  • ベースボール型:野球、ソフトボールなど

それぞれの型には、以下のような特徴があります。

異なる型を組み合わせることで、体の使い方の引き出しが広がります

例えば:

  • サッカー(ゴール型)+ テニス(ネット型)
  • バスケ(ゴール型)+ 野球(ベースボール型)
  • バレーボール(ネット型)+ サッカー(ゴール型)

② 使う体の部位が違うスポーツを選ぶ

同じ動きを繰り返すと、特定の部位に負担が集中し、成長期のケガのリスクが高まります

筑波大学の研究によると、単一競技の選手はオーバーユース障害のリスクが1.5倍〜1.6倍高いことが報告されています。

体の使い方が異なる組み合わせの例

③ 環境・指導者・仲間が変わるスポーツを選ぶ

マルチスポーツの真価は、運動能力だけでなく非認知能力(心の力)を育てる点にもあります。

  • 違う指導者との出会い → 多様な価値観に触れる
  • 違う仲間との関わり → 社会性・協調性が育つ
  • 違うルールへの適応 → 柔軟な思考力が身につく

スポーツ庁の報告でも、複数のコミュニティへの所属が子どもの社会性や協調性を育むことが強調されています。

研究から見る「マルチスポーツの組み合わせ原則」

海外の研究が示す組み合わせの考え方

ニュージーランド、アメリカ、スペインなどでは、マルチスポーツが政策として推進されています。

スペイン・バスク州の事例:
・12歳までは特定種目への選手登録を禁止
・シーズンごとに異なる種目を経験する制度

アメリカのシーズン制:
・秋:アメフト、サッカー
・冬:バスケ、レスリング
・春:野球、陸上
このように、季節や時期によって種目を変える方法も効果的です。

日本の研究が示す実践データ

日本のある市では、週に3種目の部活動に参加できる制度を導入。

その結果:
・マルチスポーツ実施児童は体力が高い
・運動が好きな子どもほどマルチスポーツを選択
・平日も週末も、運動時間が長くなる傾向

つまり、複数の種目を経験することで、自発的に体を動かす習慣が身につくことがわかっています。

年齢別|組み合わせ方の実践ガイド

幼児期(3〜6歳)

目的: いろいろな動きを楽しむ

おすすめの組み合わせ:
・習い事にこだわらず、公園遊び・水遊び・ボール遊びを中心に
・走る・跳ぶ・投げる・回る・バランスを取る、といった基本動作を幅広く

ポイント:
・「上手さ」より「楽しさ」
・遊びの延長でOK

小学生低学年(1〜3年)

目的: 動きのバリエーションを増やす

おすすめの組み合わせ:
・2〜3種目まで
・異なる型から選ぶ(例:サッカー + 水泳、体操 + 野球)
・技術より動きの多様性を重視

ポイント:
・勝ち負けより「できた!」体験
・まだ専門化しない

小学生高学年(4〜6年)

目的: メイン競技を意識しながら、補完的な動きも

おすすめの組み合わせ:
・メイン競技1つ + 補助競技1〜2つ
・メイン競技にない動きを補う種目を選ぶ
例)サッカーメイン → 体操や水泳で柔軟性・全身運動
  野球メイン → 陸上やサッカーで下半身強化

ポイント:
・徐々に比重を調整
・オフシーズンに別競技を取り入れる

中学生以降

目的: 専門化しつつ、体のバランスを保つ

おすすめの組み合わせ:
・メイン競技 + オフシーズンの補助競技
・補強トレーニングとして別競技の動きを活用

ポイント:
・完全に1種目に絞るのではなく、オフシーズンに別の動きを入れる
・ケガ予防と燃え尽き防止の両面を意識

「やってはいけない」組み合わせ方

× 同時並行で詰め込みすぎる

注意: 週7日すべて予定が埋まる状態は逆効果
・休息の時間がない
・成長期に必要な睡眠が削られる
・ストレスで燃え尽きるリスク

目安:
・小学生:週3〜4回まで
・中学生:週5〜6回まで(休息日を必ず確保)

× 同じ負荷がかかる組み合わせ

例:
・野球 + テニス(どちらも肩・肘に負担)
・サッカー + バスケ(どちらも下半身中心)
→ これでは「マルチスポーツのメリット」が薄れます

理想:
・使う部位が異なる組み合わせ
・動きの質が異なる組み合わせ

× 指導方針が真逆のスポーツ

注意: 指導者の方針が真っ向から対立する場合

例えば:
・一方は「楽しさ重視」、もう一方は「勝利至上主義」
・子どもが混乱してしまう

対策:
・事前に指導者の方針を確認
・保護者が調整役になる
・子どもの様子をよく観察する

スポーツの組み合わせ例【パターン別】

パターン① 運動能力の幅を広げたい

組み合わせ例:
・サッカー(ゴール型・下半身)+ 水泳(全身・持久力)
・バスケ(ゴール型・ジャンプ)+ 体操(柔軟性・バランス)
・テニス(ネット型・上半身)+ 陸上(下半身・スピード)

効果:
・全身をバランスよく使える
・偏りのない体づくり

パターン② メイン競技の補強をしたい

野球をメインにする場合:
・野球 + サッカー(下半身強化)
・野球 + 水泳(肩の柔軟性・全身持久力)

サッカーをメインにする場合:
・サッカー + 体操(柔軟性・バランス)
・サッカー + バスケ(判断力・手の使い方)

効果:
・メイン競技で足りない動きを補う
・ケガのリスク軽減

パターン③ 心の成長も重視したい

組み合わせ例:
・個人競技(水泳、体操)+ 団体競技(サッカー、バスケ)
・対人競技(テニス)+ チーム競技(野球)

効果:
・自己責任と協調性の両方を学べる
・多様な人間関係を経験できる

よくある質問(FAQ)

Q. 何種目まで組み合わせていいですか?

A. 年齢と子どもの負担によります。
・幼児〜小学生低学年:2〜3種目まで
・小学生高学年:1〜2種目(メイン1 + 補助1)
・中学生以降:メイン1 + オフシーズンの補助

重要なのは数より質です。子どもが「楽しい」と感じているかを最優先に。

Q. 同じ型のスポーツを組み合わせても意味がないですか?

A. 全く意味がないわけではありませんが、効果は限定的です。

例:サッカー + バスケ(どちらもゴール型) → 判断力や空間認識は育つが、動きの幅は広がりにくい

理想は異なる型の組み合わせですが、子どもが楽しんでいるなら無理に変える必要はありません。

Q. 週何回ずつ配分すればいいですか?

A. メイン競技と補助競技で比重を変えましょう

小学生低学年の例:
・スポーツA:週2回
・スポーツB:週1回
・休息日:週4日

小学生高学年の例:
・メイン競技:週3〜4回
・補助競技:週1回
・休息日:週2〜3日

Q. 親の好みで選んでもいいですか?

A. 親の経験や知識を参考にするのは良いですが、最終決定は子どもの意思を尊重しましょう。
・「やってみたい」という気持ちが一番大事
・嫌々やっても効果は半減
・途中で辞めてもOKという余裕を持つ

Q. 組み合わせを変えるタイミングは?

A. 以下のサインが出たら見直しのタイミングです。
・疲れが取れない
・ケガが増えた
・「やりたくない」と言い出した
・楽しそうじゃない
・睡眠時間が削られている

定期的に子どもと話し合い、調整していきましょう。

まとめ

マルチスポーツの組み合わせ方、3つのポイント:

  1. 動きの型が異なるスポーツを選ぶ
    • ゴール型・ネット型・ベースボール型を組み合わせる
  2. 使う体の部位が違うスポーツを選ぶ
    • 上半身・下半身・全身のバランスを考える
  3. 環境や仲間が変わるスポーツを選ぶ
    • 心の成長も大切に

そして何より大切なのは、 「子どもが楽しんでいるか」

組み合わせ方に正解はありません。 子どもの様子を見ながら、柔軟に調整していくことが一番です。

「この先も笑顔で続けられるか」

その視点で考えると、マルチスポーツの組み合わせは、とても心強い選択肢になります。

参考文献・参考資料

国内の公的機関・研究機関による資料

  1. スポーツ庁「マルチスポーツについて」
    https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/list/1377272_00003.htm
    マルチスポーツ政策の公式情報、事業概要、マルチスポーツコンベンション・体験フェアの報告
  2. スポーツ庁 Web広報マガジン「『日本型マルチスポーツ』環境の構築に向けてスタート!」
    https://sports.go.jp/tag/policy/post-145.html
    マルチスポーツコンベンションの詳細レポート、海外事例(アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、スペイン)の紹介
  3. スポーツ庁 Web広報マガジン「スポーツの未来を拓く『日本型マルチスポーツとは?』」(動画)
    https://sports.go.jp/movie/post-147.html
    マルチスポーツの意義、体験フェアのレポート動画、村尾三四郎選手(パリ五輪柔道銀メダリスト)参加のトークセッション
  4. スポーツ庁「令和6年度 地域における子供たちの多様なスポーツ機会創出⽀援事業 事業成果報告書」(PDF)
    https://www.mext.go.jp/sports/content/20250428-spt_oripara-000038002_1.pdf
    筑波大学委託研究による、マルチスポーツの学術的定義、海外5カ国の政策比較、実証研究データ、オーバーユース障害・バーンアウトに関するエビデンス
  5. 筑波大学「いま求められるマルチスポーツとは」
    https://www.tsukuba.ac.jp/community/sports/multisports/
    筑波大学マルチスポーツ体験フェア(2024年11月9日開催、353名参加)の報告、マルチスポーツコンベンションの概要
  6. 筑波大学スポーツアカデミー「マルチスポーツ・コース」
    https://tsa.tsukuba.ac.jp/sports_academy/maltisports/
    複数のスポーツを体験・探求するコースの実践事例、指導方法
  7. 文部科学省「小学校学習指導要領解説 体育編」(平成20年6月)
    https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/01/19/1234931_010.pdf
    ボール運動の3つの型(ゴール型・ネット型・ベースボール型)の定義と特徴

国内研究:

  • 筑波大学の研究データ:単一競技選手のオーバーユース障害リスクは1.5倍〜1.6倍高い
  • スポーツ庁の報告:複数のコミュニティへの所属が子どもの社会性・協調性を育む教育的意義
  • マルチスポーツ実施児童は体力が高く、運動時間が長くなる傾向

海外事例(スポーツ庁報告書より):

  • アメリカ:シーズン制により中高生の約8割がマルチスポーツを実施
  • ニュージーランド:「Balance is Better」政策によるマルチスポーツ推進
  • スペイン・バスク州:12歳まで特定種目への選手登録を禁止し、マルチスポーツを推奨
  • オーストラリア:多様なスポーツ環境の整備

分類体系:

  • 文部科学省学習指導要領:ゴール型・ネット型・ベースボール型の3分類とそれぞれの特徴

その他の参考文献

  1. 筑波大学体育スポーツ局 マルチスポーツ体験フェア実施報告
    https://www.tsukubaowls.com/post/20241113
    2024年11月9日開催の体験フェア詳細報告
  2. スポーツ庁委託事業「令和4年度 Sport in Life 推進プロジェクト『競技スポーツの普及・振興に関する調査研究』報告書」(令和5年3月)
    https://www.mext.go.jp/sports/content/230307-spt_kensport02-_000013744_07.pdf
    255種目のスポーツ分類、マルチスポーツ事例調査

注記:
この記事は2025年2月時点での情報に基づいています。最新の研究成果や政策については、各機関の公式サイトをご確認ください。リンク先の資料には、より詳細な研究データ、統計情報、実践事例が掲載されています。

PAGE TOP