試合後の子どもに、親はどう声をかける?

試合後の子どもに、親はどう声をかける?

負けて黙り込む子どもに、なかなか力を発揮できない子どもに、何を言えばいいのか。励ましたつもりなのに、「もう言わないで」と返されたら、戸惑いますよね。試合後の声かけは、言葉の内容だけでなく、子どもが今、話したいかどうかにも目を向けてみましょう。

筑波大学・稲垣和希さんへの取材と国内外の資料をもとに、5〜12歳の子どもとの関わり方を整理します。以下の会話例は、家庭で試すための提案であり、実際の体験談ではありません。

参考文献

  1. Holt, N. L., et al.(2009)Youth sport parenting styles and practices. Journal of Sport & Exercise Psychology, 31(1), 37–59.
  2. 日本サッカー協会『6歳以下のこどもたちをサポートするサッカーガイド』。
  3. 日本サッカー協会「セーフガーディング」

試合後、親の「正しい一言」を探しすぎなくていい

試合後の声かけは、決まった正解を探すより、子どもの気持ちと、今は話したいかどうかを確かめることから始めましょう。

稲垣先生は取材で、保護者の関わり方の大前提として「子どもの自己決定を阻害しない」ことを挙げました。家庭の会話に置き換えるなら、親が話題や結論をすべて決めず、子どもにも選ぶ余地を残す、ということです。

海外の研究にも、これと重なる知見があります。保護者56人と、その子どもである女子34人へのインタビューなどから、子どもの自律性を支える保護者には、気分を読み取り、双方向に会話する特徴があったと報告されています。ただし、特定の一言の効果を実験で確かめた研究ではありません。

毎回、気の利いた言葉を用意しなくても大丈夫です。「おつかれさま」と迎え、子どもが話し始めたら聞く。まずは、そのくらいの関わり方から試してみてください。

まず確認したい、試合後の子どもの4つの状態

声をかける前に、疲れ、悔しさ、話したい気持ち、助言を求める様子を見て、そのときの対応を選びましょう。

ここで示す4つは、医学的・心理学的な診断分類ではありません。家庭で対応を考えるための目安であり、複数が重なることもあります。

状態の目安子どもの言葉・様子の例最初の対応例
①疲れて休みたい「疲れた」「おなかすいた」会話より休憩や食事を優先する
②悔しさや悲しさを伝えている「負けて悔しい」と泣く「悔しかったんだね」と受け止める
③自分から話したいプレーや友達の話を始める話を遮らず、続きを聞く
④助言を求めている「どうしたらできる?」と聞くどの場面で困ったのかを確認する

注意したいのは、表情や沈黙だけで理由を決めつけないことです。黙っているから反省している、笑っているから真剣ではない、と判断するのは避けましょう。

迷ったら、「今、話したい? 少し休む?」と確かめます。返事がなければ質問を重ねず、いったん待つ。「話さない」という選択も残しておきましょう。

試合直後:評価や反省より、気持ちを受け止める

試合直後は、プレーの評価を急がず、子どもが口にした気持ちを受け止め、休む時間も確保しましょう。

子どもが「悔しい」と言ったら、最初は「悔しかったんだね」で区切ってみてください。すぐに「でも、もっと走れたよね」と続けると、気持ちを聞く会話から、親の評価を伝える会話に変わってしまいます。それは子どもにはプレッシャーです。

泣いている理由が分からないときは、先回りして「負けたから悔しいんだね」と決める必要はありません。「どうしたの?」と尋ね、話せないようなら「話したくなったら聞くよ」と待ちましょう。

場面声かけの提案意識したいこと
「シュートを外して悔しい」「あのシュート、決めたかったんだね」本人が話した内容を受け止める
「今日は何もできなかった」「どの場面でそう思った?」すぐに否定せず、本人の見方を聞く
自分から成功を喜んでいる「どんなところがうまくいった?」喜びを共有し、本人の説明を聞く

その場で元気にさせるところまで、親がしなくても大丈夫です。励ます言葉を増やすより、隣にいて話を聞くことを選んでみてください。

稲垣先生も、楽しさを大切にすることは、勝ちを諦めることではないと説明しています。勝ちたかった気持ちを、「勝ち負けは関係ない」で片づけずに聞いてみましょう。

帰宅途中:親の分析より、子どもの言葉を引き出す

帰宅途中は、まず試合の話をするか本人に確認し、話す場合も親の分析を先に伝えず、子どもの言葉を聞きましょう。

稲垣先生は、帰りの車内で「あのとき、なぜそうしたのか」と批判的な反省会になることに注意を促しています。そのうえで、楽しかったことや、以前よりできるようになったことを思い出せる問いかけを紹介しました。

日本サッカー協会の6歳以下向けハンドブックでも、サッカーの後には勝敗より、楽しかったかどうかを尋ねることが勧められています。

例えば、「今日、楽しかった場面はあった?」と聞いてみる。「なかった」と言われたら、無理に良い経験を探させず、「そうだったんだ」と受け止めます。楽しかったことを聞くのは、答えを「楽しかった」に誘導するためではありません。

5、6歳の子が「今日どうだった?」に答えにくそうなら、「シュートしたとき、どんな気持ちだった?」と、一つの場面に絞る方法もあります。一方、自分から話し続ける子には、質問を追加するより、最後まで聞いてみましょう。

家庭でのコーチングを、質問の数を増やすことだと考える必要はありません。「なぜ走らなかったの?」を「次は走ったほうがいいと思わない?」に変えても、求める答えが決まっていれば、子どもの考えを聞く余地は小さいままです。

落ち着いた後:失敗を「次に試すこと」へ変える

落ち着いて本人が振り返りを望んだら、気になる場面を一つ選び、次の練習で試したい行動を一緒に考えましょう。

振り返りは、帰宅したら必ず行う宿題にせず、「さっきのプレー、一緒に考える?」と確かめてから始めます。稲垣先生が挙げた自己決定の尊重を、話すタイミングにも取り入れる方法です。

進め方として、次の3段階を提案します。

段階親からの問いかけ例確認すること
①場面を絞る「どのプレーが気になっている?」試合全体ではなく、一場面を選ぶ
②本人の考えを聞く「そのとき、何をしようと思った?」親から見えなかった意図を聞く
③次の行動を選ぶ「次に、一つ試すなら何にする?」本人が取り組みたいことを決める

例えば、子どもが「パスが届かなかった」と話した場合。「もっと集中して」で終える代わりに、「同じくらいの距離でパスを練習したい」といった、実際に試せる行動を本人と探します。これは会話の組み立て例であり、ミスの原因や最適な練習方法はコーチにも確認しましょう。

「分からない」と答えたら、考えることを強制せず、「コーチに聞いてみる?」と助けを借りる選択肢を示します。決めた練習も、親が毎回チェックする課題にせず、「手伝ってほしいことはある?」と確かめてください。

声かけだけでは解決しないケースもある

暴言や仲間とのトラブルなどが疑われるときは、声かけの工夫だけで済ませず、起きていることと環境を確認しましょう。

「コーチに会いたくない」「また悪口を言われる」といった訴えがある場合は、前向きな言葉で送り出す前に、何が起きているかを聞いてください。日本サッカー協会のセーフガーディングポリシーも、子どもの声を聞くこと、あらゆる暴力・暴言を排除することを掲げています。

本人が話せる範囲で、いつ、どこで、誰から何をされたのかを確認し、記録します。相談先は、問題に関わっていないコーチやクラブ責任者、競技団体の窓口などです。安全が脅かされている場合は、参加をいったん見合わせることも検討してください。

稲垣先生は、コーチを人として信頼できるか、親子が求めるスポーツ体験とチームの方針が合っているかを、環境を判断する軸として挙げています。

うまくいかない理由を、親の声かけだけに背負わせなくて大丈夫です。次の試合後は、まず「おつかれさま」。その後は、子どもが休みたいのか、聞いてほしいのかを確かめるところから始めてみましょう。あくまで主役は、子ども達です。

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