基礎体力や身体操作が課題? スポーツキッズの自主練の考え方

数年スポーツを続けているのに、同学年の上位選手との差が縮まらない。そんなとき、「自主練を増やすべきでは」と考える保護者は少なくありません。

しかし、伸び悩みの原因が基礎体力にあるとは限りません。身体操作、技術、状況判断、疲労など、別の要因も考えられます。原因を確かめずに競技練習を追加すると、すでに使っている動きばかりを繰り返すことになります。

5〜15歳は、成長や身体の成熟が一定の速度では進まず、同じ年齢でも大きな差が生まれる時期です。現在の順位だけで、将来の運動能力が決まるわけではありません。

そこで取り入れたいのが、複数の運動や競技を経験する「マルチスポーツ」の考え方です。

参考文献

  1. 篠原俊明ほか「幼児における基本的動作の習得状況の3世代間比較」『日本幼少児健康教育学会誌』、2025年。
  2. Lloyd RS, et al. “National Strength and Conditioning Association Position Statement on Long-Term Athletic Development”. Journal of Strength and Conditioning Research, 2016.
  3. Barth M, et al. “Predictors of Junior Versus Senior Elite Performance are Opposite”. Sports Medicine, 2022.

伸び悩みの原因を整理する

伸び悩みは練習量不足とは限りません。技術・判断・体力・回復のどこで止まるかを切り分けます。

まず、試合や練習で困っている場面を具体的に書き出します。「足が遅い」「身体能力が低い」と決めつけず、いつ、何ができないのかを観察することが重要です。

見られる場面考えられる課題確認したいこと
終盤になると動けない持久力、配分、疲労睡眠、練習日数、休養日は足りているか
最初の一歩で遅れる反応、姿勢、力の出し方合図への反応か、走力そのものか
接触すると姿勢が崩れる筋力、バランス片脚立ちや着地でも崩れるか
練習ではできるが試合で失敗する視野、判断、緊張相手がいない状況ではできるか
特定の動きで痛みが出るけが、使い過ぎ腫れ、歩き方の変化、痛みの継続があるか

練習ではできるのに試合で使えない場合、追加すべきなのは筋トレではなく、相手や時間制限のある練習かもしれません。痛みや腫れ、足を引きずる状態がある場合は、自主練を増やさず、医療機関や専門家へ相談します。

他競技の経験が役立つケース

他競技は、今の競技で不足する動きを安全に補えるとき、自主練の選択肢として役立ちます。

マルチスポーツは、複数の競技を本格的に習うことではありません。主競技を続けながら、遊び、短期教室、体験会などで異なる動きを取り入れることも含みます。

例えば、サッカーでは蹴る、走る、方向を変える動きが多くなります。一方、投げる、ぶら下がる、回るといった動きは、通常の練習だけでは経験が少なくなる場合があります。

主競技で見られる課題経験を増やしたい動き他競技・遊びの例
着地や接触で崩れる支える、回る、着地する体操、パルクール、マット運動
相手を避けられない止まる、かわす、方向転換鬼ごっこ、バスケットボール
ボールとの距離を合わせにくい見る、捕る、打つテニス、バドミントン、野球
動きのリズムが一定リズムを変える、まねるダンス、縄跳び
上半身を使う機会が少ない投げる、押す、引くボール投げ、水泳、クライミング

ただし、「水泳をすれば必ずサッカーが上達する」という単純な関係ではありません。役立つのは、現在不足している動きを他競技で経験できた場合です。

2022年に、71件の研究報告、計9,241人の競技者を分析した結果、成人の世界トップ選手は、国内上位選手と比べ、子ども・青年期に他競技を多く経験し、主競技を始めた時期が遅く、初期の上達も緩やかでした。一方、ジュニア年代で早く好成績を収める選手には、早期から主競技へ集中する傾向がありました。

ジュニア年代でトップクラスではないことと、将来伸びないことは同じではありません。長期的な成長と、現在の順位を分けて考える必要があります。

【専門家の見解】最近の子どもに不足している運動能力・機会

最近の課題は単なる筋力不足ではなく、多様な基本動作を経験する機会が限られていることです。

子どもの運動能力は、走る速さや持久力だけではありません。立つ、回る、渡る、跳ぶ、投げる、捕る、押す、引くなど、複数の基本動作が土台になります。

2025年に発表された国内研究では、2019年の幼児100人について、疾走、跳躍、投球、捕球、まりつき、前転、平均台移動の7動作を評価しました。2007年より改善傾向が見られた一方、1985年と比べると、基本動作の習得状況は依然として低い水準でした。

この研究は幼児が対象であり、小学生や中学生全体へそのまま当てはめることはできません。ただし、スポーツを習っているだけでは、あらゆる動作を経験できるとは限らないことを考える材料になります。

米国NSCAの長期的アスリート育成に関する声明も、運動能力を、動作スキル、筋力、パワー、スピード、敏捷性、バランス、協調性、持久力を含むものと定義しています。特定競技の技術だけでなく、幅広い動作を育てることを推奨しています。

マルチスポーツの考え方から自主練メニューを選ぶ

自主練は競技練習の追加ではなく、足りない動きを別の遊びや運動で補う時間として設計します。

自主練の内容は、次の順番で決めます。

  1. 試合で困っている場面を一つ選ぶ
  2. 必要なのが体力、身体操作、技術、判断のどれかを考える
  3. 主競技の練習で不足する動きを一つ選ぶ
  4. 10〜20分で終わるメニューにする
  5. 2〜4週間続け、回数や動きの変化を確認する

小学生の自主練では、メニューを増やすより、子どもが「今日はどれをするか」を選べる形にします。保護者は回数の記録や安全確認を担当し、細かなフォーム修正は所属コーチや専門家へ相談します。

自主練は、チーム練習についていくための罰や宿題にしないことが重要です。

基礎体力を高めるメニュー

基礎体力は速さ、筋力、持久力に分け、週2〜3回の短時間メニューから無理なく始めます。

以下は、器具をほとんど使わずに行う一例です。主競技の練習が多い週は回数を減らし、動きが崩れる前に終了します。

目的メニュー例量の目安
加速・スピード10〜15mの短いダッシュ4〜6本。歩いて戻り十分に休む
脚・体幹の筋力スクワット、ヒップリフト各8〜12回×1〜2セット
上半身の支持力壁押し、膝つき腕立て各6〜10回×1〜2セット
持久力鬼ごっこ、自転車、軽いジョギング会話できる強度で10〜20分
全身の連動縄跳び30秒×3〜5回、間に休憩

同じ年齢でも、成長の時期やトレーニングへの反応は異なります。友達と同じ回数をこなせなくても、ただちに基礎体力が低いと判断する必要はありません。

米国NSCAも、子どもの成長は非直線的で、成熟の時期や速度には個人差があるため、年齢だけでなく、技術水準や発達段階に合わせた調整が必要だとしています。

身体操作を高めるメニュー

身体操作は、止まる・回る・支える・道具を扱う動きを、正確さ優先で繰り返して養います。

身体操作とは、複雑な技ではなく、自分の身体を目的に合わせて動かす力です。広い場所や特別な器具がなくても、次の運動を組み合わせられます。

動きメニュー例量の目安
支える片脚立ち、四つ這い移動20秒×左右2回
止まる3歩走って線の手前で静止5回×2セット
跳ぶ・着地する前後・左右への小さな両足跳び20秒×3回
回るマット上で横転、前転各3〜5回
見て合わせるテニスボールを投げて捕る左右各10回
まねる親子で鏡のように動く30秒×4回

難しくする場合は、速さを上げる前に、「片脚で止まれた」「音を立てずに着地できた」「左右とも捕れた」など、動きの正確さを確認します。

親が指導役になることに負担を感じる場合は、体操、ダンス、水泳、ラケット競技、クライミング、パルクール、マルチスポーツスクールなどの体験会も選択肢です。「地域名+子ども+スポーツ体験」「地域名+マルチスポーツ+小学生」などで検索できます。

マルチスポーツの目的は、予定を埋めることではありません。主競技だけでは経験しにくい動きを、子どもが楽しめる方法で補うことです。まずは自主練のうち週1回を、別の動きやスポーツに置き換えるところから始めてみてください。

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