運動が苦手な子の競技選び 親のできること

「うちの子は運動が苦手だから、スポーツは続かないかもしれない」。そう考えて、運動系の習い事を諦めていませんか。

走る速さが目立たなくても、ボールを正確に扱える。手先は不器用だけど、相手を見て判断できるなど、子どもの力が表れやすい場面は各々異なります。大切なのは、最初から一つの競技に決めることではなく、複数のスポーツを経験しながら、本人が「またやりたい」と思える活動を探すことです。

その方法の一つが、幼少期に複数の競技や運動遊びを経験するマルチスポーツです。

参考文献

  1. 文部科学省「幼児期運動指針」
  2. Bergeron MF, et al. “International Olympic Committee consensus statement on youth athletic development”. British Journal of Sports Medicine, 2015.
  3. Jayanthi NA, et al. “Sports-specialized intensive training and the risk of injury in young athletes”. American Journal of Sports Medicine, 2015.

誰にでも得意なスポーツはある

「運動が苦手」に見えても、苦手なのは特定の動きかもしれません。まず競技との相性を分けて見てみましょう。

正確には、すべての子に必ず得意競技が見つかるとは断定できません。しかし、一つの競技や体育の成績だけで、子どもの運動能力全体を判断することもできません。

文部科学省の「幼児期運動指針」は、同じ年齢でも発達には大きな個人差があるため、一人ひとりの発達に応じた援助が必要だとしています。また、5〜6歳頃は、走る・跳ぶだけでなく、投げる、捕る、転がす、蹴るといった動きを組み合わせられるようになる時期です。

例えば、かけっこでは目立たない子が、ドッジボールでは相手の位置を見て逃げられることがあります。球技が苦手でも、水中では落ち着いて体を動かせるかもしれません。

「運動が苦手」ではなく、「まだ力が表れやすい運動に出会っていない」と考えることが、競技選びの出発点です。

走る、蹴る、投げる、考える――競技によって必要な能力は異なる

競技ごとに必要な動きは違います。速さだけでなく、操作・バランス・判断まで観察することが大切です。

子ども向けスポーツでは、次のような能力がさまざまな割合で使われます。

能力・動き表れやすい場面関連する運動・スポーツの例
走る・止まる・方向を変える鬼ごっこで逃げる、相手を追う陸上、サッカー、バスケットボール
投げる・捕る・打つ道具やボールの位置を調整する野球、ドッジボール、テニス
蹴る・運ぶ足元を見ながら周囲も確認するサッカー、フットサル
回る・支える・バランスを取る姿勢を保つ、体の向きを変える体操、ダンス、水泳
見る・予測する・選ぶ相手や空いている場所を見つける球技、ラケット競技、武道

IOC(国際オリンピック委員会)の若年アスリート育成に関する合意声明でも、競技には身体的能力だけでなく、知覚、認知、戦術面など異なる要求があると整理されています。

そのため、50メートル走の順位だけで「子どもはスポーツが苦手」と結論づけるのは早計です。速さに加えて、道具の扱い、動きのまね、状況判断、活動への集中も観察してみましょう。

【海外の知見】早く得意競技を決めるより、多様な動きを経験する

5〜10歳では一つに絞り急ぐより、複数の動きと競技を試し、好きと得意の手がかりを集めましょう。

マルチスポーツとは、複数の有料スクールへ同時に通うことだけを意味しません。季節ごとに違うスポーツを試す、週末に運動遊びへ参加する、一つの競技を続けながら別競技の体験会へ行くことも含めて考えられます。

IOCの合意声明は、若年期には競技間だけでなく、同一競技内でも多様な運動経験を促すことを推奨しています。文部科学省も、幼児について、特定のスポーツだけを続けるより、遊びを通して多様な動きを経験することが重要だとしています。

早期の一競技集中については、けがとの関連も報告されています。7〜18歳の1,190人を対象とした米国の研究では、一競技への専門化は、けがのオッズが1.27倍、重い使い過ぎ障害のオッズが1.36倍でした。また、週当たりの組織的スポーツ時間が年齢の数値を上回る子どもは、重い使い過ぎ障害のオッズが2.07倍でした。

ただし、これは医療機関を利用した子どもを含む観察研究であり、参加者も本記事の対象より年長者が中心です。「5〜10歳には一競技が危険」と直接証明した結果ではありません。それでも、幼少期から一競技の練習量を増やせばよいとは限らないことを考える材料になります。

親にできる5つのサポート

親の役割は上達させることより、試せる環境を整え、本人が続けたいかを判断できる材料を集めることです。

1.早期成果を求めない

体験初日に、できた回数や勝敗だけで適性を決めないようにします。初めての場所では、ルールや人間関係を理解するだけでも負担がかかるからです。

最初は「最後まで参加した」「説明を聞けた」「一度失敗しても戻れた」といった行動を見ます。幼児期には早急な結果ではなく、その後もスポーツを楽しむための基盤づくりを重視したいものです。

2.他の子と比較しない

同じ学年でも、体格、発達、経験年数は異なります。比較するなら、周囲の子ではなく、その子自身の前回と比べます。

「前よりボールに触れた」「自分から列に並んだ」など、観察した事実を一つ伝えるだけで十分です。

3.勝敗以外の成長を見つける

競技選びでは、得点や順位以外も記録します。

観察する項目具体的な見方
参加意欲自分から準備したか
試行回数失敗後にもう一度試したか
集中説明や実演を見ていたか
関わりコーチやほかの子と活動できたか
終了後の反応「またやりたい」と話したか

4.複数の体験機会をつくる

一度に習い事を増やす必要はありません。まずは1〜2か月の間に、タイプの違う活動を三つほど試してみましょう。

例えば「走る・よける運動」「ボールや道具を使う運動」「バランスやリズムを使う運動」という組み合わせです。同じ能力ばかりを比べずに済みます。

5.子どもの感想を聞いて決める

体験直後に「上手にできた?」と聞くと、評価を求められたように感じる子もいます。次の三つを聞いてみましょう。

  • 何がおもしろかった?
  • 難しかったのは何?
  • もう一度やるなら、どれをやりたい?

言葉にしにくい場合は、「また行きたい度」を0〜5で指やカードを使って示してもらいます。親の印象と子どもの回答を分けて記録すると、選択理由が整理しやすくなります。

親として気を付けたいこと

親子で体を動かすこと自体は、運動不足の解消につながる大切な機会です。一方で、親が毎回フォームを直したり、練習量を管理したりすると、親は「教える人」、子どもは「評価される人」になりやすくなります。よかれと思ってアドバイスすることが、子どものやる気を削ぐことも。外部の体験会も使いましょう。

家庭では一緒に楽しむことを中心にし、専門的な指導はコーチへ任せるという分担も選択肢です。特に、親にも馴染みのないスポーツなら、先入観を持たず、子どもと同じ立場で体験できます。

探し方検索語の例
自治体・公共施設の教室「地域名 子ども スポーツ体験」
総合型地域スポーツクラブ「地域名 総合型スポーツクラブ 小学生」
単発の競技体験会「地域名 スポーツ体験会 低学年」
複数競技を扱う教室「地域名 マルチスポーツ 子ども」
運動遊び中心の教室「地域名 運動苦手 子ども 教室」

体験会では、競技内容に加えて、待ち時間が長すぎないか、失敗した子への声かけがあるか、経験者だけが活動していないかも確認しましょう。

最初に選ぶべきなのは「将来伸びそうな競技」ではなく、今の子どもがもう一度参加したいと思える環境です。

マルチスポーツは、才能を早く見つけるためだけの方法ではありません。走る、投げる、蹴る、回る、考えるという多様な経験を通して、「体を動かすのは楽しい」と感じられる入口を増やす方法です。まずは家族で、タイプの違う体験会を一つずつ調べるところから始めてみてください。

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