はじめてのスポーツ選び。上手さよりも大切な3つの視点
「うちの子、どのスポーツが向いているんだろう」
習い事を選ぶとき、多くの親が最初にぶつかる疑問です。体験教室で「筋がいい」と言われると、つい期待してしまいますよね。
でも、答えを「上手さ」や「才能診断」に求めようとすると、実はうまくいきません。成長や成熟、経験、指導環境によって、見える能力は変わるからです。
一つの競技を見て「向いているか」を判断しようとするのではなく、実際に複数のスポーツをやらせてみて、そのときの子どもの反応を比べること。それが、合うスポーツを見つける方法の一つです。今回は、その根拠となるデータと、複数のスポーツを試す中で観察したい3つの視点を紹介します。
目次
参考文献
- 早稲田大学スポーツ科学部「幼児期から始めれば、スポーツの才能は開花するか」https://www.waseda.jp/fsps/sps/news/2016/06/27/3648/
- スポーツ庁委託事業(筑波大学)「令和6年度 地域における子供たちの多様なスポーツ機会創出支援事業 事業成果報告書」https://www.mext.go.jp/sports/content/20250428-spt_oripara-000038002_3.pdf
- 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター「動機づけ(モチベーション)とは?」https://pathway.jpnsport.go.jp/sports/pdf/column11.pdf
なぜ「一つに絞る前に、複数やらせる」べきなのか
早稲田大学スポーツ科学部によると、国際レベルと国内・地域レベルの選手を比較した調査では、国際レベルの選手のほうが幼少期のスポーツ経験の種目数が豊富で、成長するにつれて自分に合う競技を絞り込んでいったケースが多いと報告されています。トップレベルの選手ほど、実は早くから一つに絞っていたわけではないのです。
続けられるかどうかのデータも、同じ方向を示しています。海外の研究データとして、6歳から1種目に絞った早期専門化グループは18歳までに47%が競技を離脱していたのに対し、12歳までに3種類以上を経験した多様な経験グループでは18歳時点での継続率が82%だったと紹介されています。
つまり、才能を見極めて最初から一つに絞り込むよりも、実際に複数のスポーツをやらせてみて、そのときの反応を比べるほうが、結果的に理にかなっているということです。(ただし、適切な専門化の時期は競技によって異なり、体操やフィギュアスケートなど、比較的早く専門的練習を始める傾向のある競技もあります)
では、複数のスポーツを試す中で、親は子どものどんな反応を見ればいいのでしょうか。次の3つの視点が手がかりになります。
子どもの向き不向きを見極める3つの視点
いくつかの体験教室や習い事を試すとき、それぞれについて、以下の3つを観察してみてください。
視点❶ 自分から「またやりたい」と思えるか
見るべきなのは、体験中に夢中だっただけではなく、体験後にも興味が続いているかです。
例えば、
- 家で習った動きをもう一度やる
- 「次はいつ?」と聞く
- 自分なりのやり方を試そうとする
こうした行動は、外から褒められたからではなく、本人の内側から生まれる意欲の表れです。
一方、「楽しかった?」と聞かれて「楽しかった」と答えただけでは、判断しにくいところがあります。幼児や低学年は、親の期待に合わせて答えることもあるためです。言葉より、数日後の自発的な行動も手がかりになります。スポーツの継続には、親や指導者からコントロールされる動機よりも、自分で選んでいる感覚を伴う動機が関係するのです。
視点❷ 「できた」を感じられるか
大切なのは、最初から上手かどうかではありません。見るべきなのは、その子に合った難しさが用意され、上達を実感できるかです。簡単すぎれば飽き、難しすぎれば「自分にはできない」と感じます。
よいスクール・コーチは、
- 道具の大きさや距離を変える
- その子に合わせてルールを簡単にする
- 他の子との比較ではなく、前回からの変化を認める
- 待ち時間が少なく、何度も試せる
- 走る、跳ぶ、投げる、捕る、止まるなど、多様な動きがある
といった工夫がされています。
特に幼児・低学年では、特定競技の技術を早く磨くこと以上に、いろいろな動きの土台をつくることが重要です。基本的な動作能力は、体力や将来の幅広い運動参加と関連しています。
したがって、親が見るべきなのは「サッカーの才能がありそうか」ではなく、「子どもが『やってみる→少しできる→もう一度やる』というサイクルに入れているか」です。小さな「できた」を感じられることが、「もう一度やってみたい」という意欲につながることがあります。
視点❸ 失敗しても安心できるか
幼児や低学年では、種目だけでなく、コーチや仲間との関係、教室の雰囲気も継続に関わります。
体験時には、子どもの様子だけでなく、コーチの振る舞いも見ます。
- ミスした子にどう声をかけているか
- 上手な子ばかりを相手にしていないか
- 怖がる子や動きの遅い子を急かさないか
- 子どもの話を一度受け止めているか
- 勝敗だけでなく、挑戦や工夫を認めているか
- 子ども同士のからかいや序列を放置していないか
つまり、子どもが「このスポーツに向いていない」ように見えても、実際には、そのスクール・クラブ、そのコーチ、その集団が合っていないだけということがあります。
一つに絞る前に、複数の体験機会をつくろう
子どもに合うスポーツとは、最初から上手にできるスポーツではありません。自然と夢中になり、続けたくなるもので、「自分からやりたい」「少しずつできる」「失敗しても安心」と感じられるスポーツです。
よって、最初のスポーツ体験・習い事は、「才能を発見する場」ではなく、「スポーツを好きになれる条件を探す場」 と位置づけ、複数のスポーツを実際にやらせてみることがオススメです。